健康と食品の解説
トランス型脂肪酸とは:食品表示を義務化した米国FDA
2013/08/30
最終更新:2026-07-29
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米国では2003年から3年近い猶予期間が終了し、2006 年1月1日から食品にトランス型脂肪酸の 含有量表示が義務付けられました。 トランス脂肪の有害論が世界の食品業界に多大な影響を与えているのは 食用油、食用油脂の抽出にはトランス脂肪が生成される製法が多用され、 製パン、製菓業界では、成形や保存にトランス脂肪が重要な役割を果たすからです。 ![]() ![]()
水素添加化合(hydrogenation)とは トランス型脂肪酸は省略してトランス脂肪(trans fat)とも呼ばれています。 トランス型脂肪酸は飽和脂肪酸の構造になりますが、不飽和脂肪酸が変化した状態のみを指します。 脂肪酸は水素を結合した炭素が鎖状に結合していますが、 魚油や植物の種などに含有される不飽和脂肪酸(unsaturated fatty acids)のほとんどは、 変化しやすい、不安定な形のシス型脂肪酸として存在しています。 不飽和脂肪酸には炭素が2重結合した部分がありますが、その部分の炭素には、 二つの水素原子が片側にリンクしています(図左側)。 ![]() これらは炭素連鎖の中でお互い、反発しながらどこまでも絡まっていきます。 これがシス型脂肪酸と呼ばれるものです。 ネーミングの由来はラテン語の「同じ側」という言葉からです。 不安定なシス型脂肪酸は老化、酸化しやすいのが欠点。 そのために製油や加工食品には安定した脂肪酸が必要となります。 シス型脂肪酸は加熱するか、*意図的に炭素の2重結合部分の水素を反転させると 水素添加化合(hydrogenation)がおこります。 水素添加化合は炭素の二重結合部分に水素を化合させて、単結合にすることで、 2重結合の二つの水素原子が反対側に移動するという化学的変化(図の右側)。 これがトランス型脂肪酸で、絡まりが解けて鎖は直線的になります。 直線的な脂肪酸分子の鎖は絡まったものよりコンパクトになります。 ということは全体的に安定化するということです。 ネーミングの由来は水素添加化合が行われる時の、水素の移動(トランス)を指しています。 水素添加化合により不飽和脂肪酸のオレイン酸(Oleic acid)やリノール酸(linoleic acid)は 二重結合を失い、飽和脂肪酸のステアリン酸(stearic acid)となります。 *工業的水素添加化合(hydrogenation)は圧縮水素を金属触媒により添加。 製油の場合は抽出時に化学溶剤のヘキサン(hexane:C6H14)を使用することも多いようです。 ヘキサンはヨウ素、臭素を溶かす無極性溶剤としても使用される物質。 2.トランス型脂肪酸を含有する食品 大部分の植物食用油は加熱や水素添加によって製造されます。 したがって、植物性食用油から作られるショートニング、マーガリン、飴、クッキー、スナック菓子、 フレンチフライなど揚げ物、サラダ・ドレッシング、パンなど焼き物が、主たるトランス脂肪含有食品。 動物性ではバター、チーズ、牛肉、羊肉などにも、少量ですがトランス型脂肪酸が、含まれます。 牛など食物を反芻消化する哺乳類は、胃の微生物によってもトランス脂肪が合成されますから 反芻動物の肉や乳脂肪中にもトランス脂肪が存在します。 一時は問題になるほどの量が含有されていないといわれたことがありますが近年は牛肉の赤身など は危険性が論じられるようになりました。 3.トランス型脂肪酸の有害性。 米国食品医薬品安全局(FDA)*がトランス型脂肪酸の食品ラベル表示に踏み切ったのは、 トランス型脂肪酸が、悪玉コレステロールのLDLコレステロール値(low-density lipoproteins)を上昇させる 飽和脂肪酸というばかりで無く、より影響の大きいだろう、善玉コレステロールのHDLコレステロール値(high-density lipoproteins)を低下させることを認めたからです。 HDLコレステロールの総コレステロールにおける割合の低下は、LDLコレステロール値の多少より、 はるかに冠状動脈に悪影響を与える指標マーカーです。 トランス型脂肪酸は脳の血管にも悪影響を与え、アルツハイマーやパーキンソン病の原因となるとい う研究もあります。 また血中の中性脂肪の大部分を占めるトリグリセロール(triglycerides) が増加することで インシュリン抵抗性が増し、高血圧、糖尿病、心臓病の原因ともなるといわれます。 *食品医薬品安全局(FDA)(the Food and Drug Administration)は 米国厚生省(US Department of Health and Human Services)の部局。 4.トランス型脂肪酸の食品ラベル表示決定の背景。 米国、国立心肺血液研究所(the National Heart Lung and Blood Institute)の調査では、 米国には1250万人の冠状動脈疾患患者がいると言われ、毎年50万人を超える死者が発生しています。 食品医薬品安全局(FDA)はトランス脂肪とコレステロールに関する情報を米国立衛生研究所*(NIH)の コレステロール教育計画特別チーム(the National Cholesterol Education Program)、 全米科学アカデミー(National Academies of Science)の医療研究所(医学院:Institute of Medicine)、 2000年の米国食事摂取基準*を作成した特別委員会(the Advisory Committee on the Dietary Guidelines for Americans)などに求め、その都度、結果を公表してきました。 *米国立衛生研究所(NIH)(the National Institutes of Health)は 米国厚生省(US Department of Health and Human Services)傘下の研究所。 *農林省(US Department of Agriculture)(USDA)などにより、5年ごとに作成される。 5.トランス型脂肪酸の食品ラベル表示決定までの歴史。 米国では1990年11月8日に栄養表示規制法(the Nutrition Labeling and Education Act)(NLEA) が成立し、 1993年からコレステロール、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の量が食品ラベルに表示されるようになりました。 すでに有害性が問題になっていたトランス型脂肪酸の含有量表示は、この時には対象外となりました。 1994年ごろに、消費者擁護科学センター(the Center for Science in the Public Interest)の強い陳情が始まりますが、 有害性、有害量の決定的な証拠が提出できないために、度重なる改訂時にも表示に踏み切ることが出来ませんでした。 現在の製パン、製菓、フライなど、マーガリンや油脂を使用する加工食品業界においては、 トランス型脂肪酸が常用されているために、確たる根拠なしに早急に禁止するわけにはいかない 事情がありました。 1999年になり、多くの研究報告が出揃ったため、FDAはラベル表示にトランス脂肪の含有量を記載すべき、 とする方向になりましたが、実際に決定されたのは2003年7月9日。 FDAは2006年1月1日まで表示義務を猶予していますが、この日より3年間で少なくとも 600 -1200 件の冠状動脈疾患を防ぎ、250-500人の死者が救えると予想しています。 ラベル表示は一日摂取量0.5グラム以上のサプリメントにも適用されます。 初版:2005年10月 |




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